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夕焼けの絵葉書 [感動する話]

写真 2014-08-16 19 55 05.jpg

ふと思い出したけど、

俺、死んでしまった子から

絵葉書もらったことがある。


中学のときの隣のクラスの女の子で、

病気でほとんど学校にこないまま死んでしまった。


うちの学校は生徒数が少なかったので、

体育のときや課外授業のバードウォッチングとか

2クラス合同でやる科目がいくつかあって、

まだ学校にくることができた頃に

何度か一緒になるくらいだった。


一度だけ喋ったことがある。


寝坊して完全に遅刻だしと思って、

いつものバス停に歩いて行ったら

その子が停留所のベンチに座ってた。


田舎だから時間ずれると

バスがぜんぜんこなくって、

しばらく黙ってたけど暇だし

なんとなく話しかけたんだ。


「お前も寝坊したの?」


「・・・病院、よってきたから」


俺はそのときになって、

なんだか知らないけど病弱で

ほとんど学校にきてない子がいるって

話を思い出し、それがこの子だと気づいた。


その子はそれから1年くらいで

死んでしまったので、

今思えば本当に無神経なんだけど

俺は

「へえ、どっか悪いの?」

と訊いてしまった。


彼女は少し笑って

「うん、ちょっとね」

って言ってた。


彼女は俺が中学にあがるまで

新聞配達していたのを知ってて

(彼女の家にも配達していたらしい)、

「前から思ってたけど、ほんとえらいよね」

ってやけに褒めてくれたもんだった。


じつはゲームソフト欲しさだったことは

言わなかった。


バスがきて、学校につくまで

たわいもない話をした。


天気いいのにかったるいよなーとか。


彼女と話したのはそれが最初で最後だった。


中学卒業したあとで絵葉書が届いた。


夕焼け空のきれいな写真のハガキだった。


最初は誰かわからなかったけど、

しばらく考えて思い出した。


そのちょっと前に葬式があったと

聞いていた子だった。


「朝焼けの写真だったらよかったのに。

 でも、夕焼けもきれいでしょ?」

と書いてあった。


その下にスペースがあまっていたから、

もしかしたらほかにも書こうとして

やめてしまった書きかけ

だったのかもしれない。


書きかけのまま大切そうに

しまっておいた絵葉書を、

家族の人がみつけて

出してくれたんだそうだ。


新聞配達なんて眠いし重いし

手が真っ黒になるけど、

朝焼けが気持ちいいと、

かっこつけて話したのを思い出した。


そのハガキ、たぶんまだどっかにあると思う。



動画版はこちら



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